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第二部
十二日博物館、展覧会、活動、
学問の分類を始める前に、之に先だって、学問という社会的存在と、学問ならぬ夫との、区別を与えておく必要がある。吾々の生活に於て、生産的乃至創造的営みと、そうでない営みとを区別出来るならば(蓋し生産は物質的形態に於ける創造概念であり、創造は必ずしも物質的形態を必要としない生産概念であろう)、生産的乃至創造的営み、労作それ自身は、――この労作の結果の享有ではない、――最も根本的な意味に於て、芸術(Ars)と呼ばれて好いであろう*。人々は之を或る意味での自然概念に対立せしめる。人間は原理的に、自然の内に於て生活しながら自然を利用し、之を使役し、その意味に於て之を征服し、否定する。自然概念のこのような否定――それは単なる又直接なる否定ではなくして、その克服・止揚である――を理解せしめるものが今の芸術概念なのである。之によって人間の自然生活――如何なる人間も常に自然生活を営まずにはいられないが――は歴史的生活にまで否定され止揚されるであろう。芸術の概念によって初めて、自然生活は常に歴史的生活として性格づけられなければならぬ理由が与えられる。人間生活に於ける此の芸術を認める限り、如何なる場合と雖も、生活の(社会の)単なる自然的条件などというものはあり得ないであろう。人間の生活を今の通り理解する限り、この生活そのものに他ならない社会は、常に歴史的でしかあり得ない。この時社会を自然的な乃至一般に超歴史的な諸関係としてのみ理解し片づける理由は何処にもあり得ない。社会は常に歴史社会である。歴史社会を特徴づけるものそれが芸術であった。そして学問は第一にこの芸術にぞくする。
看護婦今朝ほどお咳がちよつと長く続きましたけれど、ほかに異状ございません。
「――おかげで退屈しないで済みました。汽車の旅って奴は、誰とでもいい、道連れはないよりあった方がいいもんですなア。どんないやな奴でも、道連れがいないよりあった方がいい」
歴史は複雑だ。けれどもその複雑を一貫する単純はある。たとえば征服の形式はいろいろある。しかし古今を通じて、いっさいの社会には、必ずその両極に、征服者の階級と被征服者の階級とが控えている。
手塚さんは、郷里に帰っても、私のとこの二階の室は、やはり借りておいて、荷物はそっくり置いてゆくとのこと。いつ戻ってくるか分らないと言いながら、予定通りに半年ばかりで戻ってくるつもりなのだろう。そしてその間、私の心を繋ぎとめておきたいのだ。女を引きつけるには、好意にせよ、敵意にせよ、とにかく何等かの関心をこちらに持たせることが肝要で、無関心の状態に置いてはいけないと、何かに書いてあった。愛情でなくば、むしろ憎悪を、女に懐かせることが肝要だと。手塚さんの言葉は、そのどちらかをどうぞ、というような調子だった。姉さんには時折縁談があり、不在中にどんなことになるか分らないものだから、万一の場合のため、私の心を惹きつけておきたいのだ。いつも独りでは淋しいのだ。戦争のために心情は荒れてしまっておるし、工場に勤めて製図ばかりやり、生活に潤いがないからだろう。
「あら、じゃ、学校は京都でしたの」
方法は無論まず第一に研究の方法である。吾々が実際上学問研究を実行する時、吾々がその後を追わねばならぬ道が方法である。吾々が交渉に於て出会った対象は、ただ之を通路としてのみ通達される。この時、問われた対象は答えられるであろう。対象は茲に一つの変化を蒙りながら運動したことを今吾々は注意しなければならない。今まで期待されてあった対象は実現され、今まで彼岸にあった対象は此岸へ来た。研究の対象は学問の内容となった。事柄それ自身であった処の対象は今やその対象に就いての学問となった。過去の事件としての歴史は書かれたる歴史となる、史学に構成される。この時対象の概念に二つを区別しなければならないのは必要な穿鑿であるであろう。未だ構成されたものではなかった対象が構成された対象となったのであるから、構成前の対象と構成後の対象とが区別されなければならない。実際人々は規定を異にするこの二つの対象概念を交々用いているであろう。「認識の対象」と云う時、人は前者を考えるが、「数学の対象」という時、人々は恐らく数学という学問の内容を考えるであろう。無論吾々は例えば対象と内容との区別を之に当て嵌めることは出来ない。この意味での対象自身が構成前とも構成後とも考えられるのだからである。後者の区別は構成前後の夫であって、超越内在の区別ではない。併しフッセルルは却って次の区別を挙げている、GegenstandschlechthinとGegenstandimWieseinerBestimmtheiten*(但しこの区別は二つの別な対象であるのではなくして、同一の概念の二つの異れる規定であるのである。それでは何故吾々は之を別な概念として名づけないのであるか。何故に不便にも対象という同じ概念を用いねばならぬのか。――同一の対象概念自身が運動するからである)。さてこの対象の二つの区別に応じて、方法はこの時、単に研究の方法――構成前の対象に通達すべき――であるばかりではなく、研究されたる――構成後の――学問の対象のその構成の原理でもなければならない。かくて吾々は一見全く異るように見える処の二つの方法概念を得る。「学問研究の方法」と「学問構成の原理」。そして実際二つは全く異った性格を以て吾々に理解されているであろう。一つの実験を如何に装置すべきか、或る学術書を如何にして読むべきか。之は確かに「学問研究の方法」を問うものとして吾々が語る処である。処が化学は如何なる基礎に基くか、法律学は如何なる根柢の上で成り立つか。之は確かに「学問構成の原理」を問うものとして吾々が口にする処である。併し事実上、二つは如何に甚だしく異る問いであることか。――もし前者に答えるのに後者を以てし、又後者に答えるのに前者を以てするならば、吾々は嗤うべき迂遠かあわれむべき浅薄の非難を受けずにはいられないであろう。今私は事実上明らかなこの二つのものの区別を均らして了おうとするのではない。そうではなくして却って、かかる区別にも拘らず、同じく方法という概念を以て吾々がこの二つのものを理解しているその根拠をば、方法概念が有つ存在論的構造に於て発見するのが目的なのである。方法は今や全く離れたかに見える二つの概念を持つ。研究方法と構成原理。そして前者は構造の上から無論後者に先立たねばならぬ。かくて後者は前者の研究の方法に対して、学問の方法と呼び做される。この時元来研究の方法であった方法が、研究という性格を振り落して単に学問の方法となったことは、事実上起こる著しい変化でなくてはならない**。
「書くよ、書くよ、必ず書くよ。」と先生も調子を合せた。
*方法に対するものとして人々は体系とか主題とか資料とかを挙げるかも知れない。おのずから明らかとなる理由によって私は之からは出発しない。――体系に就いては後を見よ。
二月一日IdealhusbandをMissWellsと見る。
これは、要するに、理論と実践の二途について――例へば政治の如き――一様の批判は加へられぬものもあるに相違ないが、少くとも精神文化の方面に於て近代国家の面目としても、甚だ外聞を憚るような社会的現象が、何等指導階級の注意をすら惹かずに存在し続けていることを、識者は既に幾度も叫んでいるのである。
隊で逆立ちの一番下手なのは、大学出の白崎恭助一等兵だったから、白崎は落語家出身で浪花節の巧い赤井新次一等兵と共に、常に隊長の酒の肴になっていた。
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